『骨董屋・眼球堂』
2019年 04月 17日
気になる題名に、早く読みたくてうずうずしていました。
タイトルのとおり、眼球にまつわる読み応えのあるファンタジーです。
目玉の取引と言えば、思い浮かぶのは「大工と鬼六」
目玉と引き換えに橋造りを鬼に頼んで、鬼の名前を当てたら、
目玉は取られずに済むという昔話。
目玉というのは命と引き換えになるほどの大事なもの。
このお話の中でも大事な役割を果たします。
主人公は目を病んでいる女子中学生、柚香。
文芸部の部員で、物語を書く少女。
ふとしたことで、迷い込んだ不思議な扉の奥の骨董屋で
物語ることと引き換えに、新しい眼球をもらう取引をする。
紫檀のテーブルに並べられた骨董が語る物語を
柚香はそのものに変わって、語り出す。
その物語は、眼球にまつわる、妖しく、物悲しく、不可思議なものばかり。
柚香の日常と物語の非日常が絡み合って、思いがけない結末が導き出される。
眼球の取り換えというのは、目薬を差すのもビクビクのわたしにはとても恐ろしいこと。
でも、近未来的に、クローン技術が進んだら、そんなこともありえそう。
物語を紡ぐことの、危うさや愉しみもそっと描かれていて、はっとしました。
個性的な発想といつもながらの構成力の緻密さ。
不気味になりそうな題材を、透明感のある文章できれいにさらりと描いてあるのはさすがです。
謎の多いもう一人の主人公、骨董屋の店主を、栗奈ちゃんがまた別の機会に描いてくれたら嬉しい。
柚香の結末にはほっとして、救われました。
by junecat6
| 2019-04-17 14:01
| 本
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